平成15年度(2003) 試験 問45 | 中小企業診断士 中小企業経営・政策
コーチングの基本原則は次のような項目に集約される。
1, 指示命令するのではなく、相手の自発的行動を促す。
2, 答えを与えるのではなく、相手に考えさせ、答えを見つけ出させる。
3, 相手の可能性や潜在能力を信じ、それらを最大限に引き出すためのサポートをする。
以下は、従業員40名の食品加工会社の2代目社長から、中小企業診断士が相談を受けている場面の会話である。
社長「私は、先代の社長の急死で、社長を継承して1年になりますが、まだこれといった成果を出していません。早く実績をあげて、従業員から人望を集めたいのですが、何をすべきでしょうか。」
診断士「なるほど、従業員の人望を集めたいと思っていらっしゃるのですね。では、逆にあなたが従業員だとしたら、2代目の社長に何を期待しますか。」
社長「そうですねえ、大口の新規顧客を取ってきて欲しいですかね。」
診断士「なるほど、ほかにどうですか。」
社長「現場を一緒に回って欲しいかな。」
診断士「現場を一緒に回っているとき、従業員としてのあなたは、社長に対してどのような話をしたいと思いますか。」
社長「現場での苦労話や自分のアイデアを社長に聞いてもらいたいと思うのかな。」
診断士「今の社長の話を聞いていて、社長自身が従業員の方の話に耳を傾けている姿を、私はイメージできましたが、いかがですか。」
社長「そうですね、これまで自分ひとりの力で実績を出そうとばかり考えていて、従業員と現場で会話することが少なかったように思います。」
診断士「 [A] 」
(設問1)
上記の会話をコーチング的観点から考察した場合、最も不適切なものはどれか。
クライアントを社長という役割から距離をおかせることで、ものの見方、とらえ方を絞らせることができた。
社長の立場からではなく、従業員の立場に立って考えさせることによって、クライアントの視点が変わった。
「従業員の人望を得るには自分で実績をあげることだ」ということに固執している自分にクライアントが気付いた。
従業員の立場から社長に期待することが、「大口顧客の開拓」と、「現場で一緒に回って話をする」の2つだけだった。しかし、さらに会話に広がりをもたせるためには、もっと「ほかにないか」とたくさん聞くこともできた。
今一番話してみたい従業員をひとり上げるとしたら、誰が浮かびますか。
現場に出ることに対して、自分の中で障害になることがあるとしたら、どのようなことですか。
社長は現場に出てどのような指示を出しますか。
ではいつから、現場に出ますか。