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A社は、公共のインフラを整備する事業を行うことを目的として、平成20年(2008年)9月に新機器の開発とその製造に関するコンペティション(入札)を行い、その結果、B社の製品を採用することを決定した。

A社とB社間で製品の仕様・対価・数量の概要が合意され、A社が平成21年(2009年)4月から新機器を利用したサービス開始を予定していたため、B社は新機器の開発やA社の要求する数量を期限までに間に合わせるために、A社とB社間で開発及び製造に関する業務開発委託契約書を作成する前に、B社は前倒しで部品の調達及び新機器の開発を進めていた。このような事情をA社の担当者は把握しており、A社はB社に対して納品がサービス開始の日程に間に合うかということを何度となく確認し、B社も急ピッチで作業を行っていた。

ところが、A社の代表者が平成21年1月にいわゆるインサイダー取引の容疑で刑事訴追を受けたことから、A社の取締役が総入れ替えして新体制となり、事業縮小の一環で当該事業も取りやめる旨を決定した。

結局、A社とB社間では契約書の作成も行われず、B社が調達した部品や開発した機器が、A社の当該事業のために特別に発注したものだったため、他に転用することができず、B社のもとに残った。以上のような事情を前提に次のうち最も適切なものはどれか。

選択肢 ア

A社は、B社との間で契約を締結していないことから、B社に生じた損害を一切賠償する必要はない。 

選択肢 イ

A社はB社に対し、契約締結の準備段階における信義則上の注意義務に基づいて、B社が実際に当該機器の開発・製造のために調達した部品の代金の全部又はその一部を賠償しなければならない。 

選択肢 ウ

A社はB社に対し、契約を締結しなかったという債務不履行責任に基づいて、実際にB社がA社に当該機器を販売した場合に得られるべき利益を賠償しなければならない。 

選択肢 エ

A社はB社に対し、その代表者が刑事訴追を受けたという不法行為責任に基づいて、B社の生じた損害を賠償しなければならない。

[出典:中小企業診断士 経営法務 平成21年度(2009) 試験 問15]

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