平成17年度(2005) 試験 問15 | 中小企業診断士 経営法務
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
研究者である甲氏は、発明した研究成果を事業化するために他の研究者と共同で出資し、株式会社Xを設立した。
株式会社Xは、事業会社Aとの共同研究の結果、事業化の目処が立ち、今後の事業展開のための資金が必要となった。
一方、研究成果が画期的なものであったため、以前からベンチャーキャピタルが株式会社Xへ出資の打診をしてきていた。
そこで、社長甲氏は、中小企業診断士であるあなたに、資金調達についてのアドバイスを依頼した。
中小企業診断士であるあなたは、①「ベンチャーキャピタルからの資金調達だけではなく、共同研究を実施してきた事業会社Aに出資を依頼してみてはどうか。」と提案した。
また、資金調達の方法としては、「②第三者割当増資を実施した場合、社長の持株シェアが低下するため、③デットファイナンスの可能性を検討しても良い段階になってきたのではないか。」とアドバイスした。
さらに、第三者割当増資を実施する場合、「役員、従業員のインセンティブとして④ストックオプションの導入も検討しましょう。」と提案し、具体的な資本政策を立案することとした。
(設問1)
文中の下線部①のベンチャーキャピタルからの資金調達に関する記述として、最も適切なものはどれか。
証券取引法において、投資事業有限責任組合の組合員への分配は、現金以外は認められていないため、組合員が組合の投資先企業の株式を直接所有することはない。
投資事業有限責任組合は、業務執行組合員であるベンチャーキャピタルに運営を一任する制度であるため、他の組合員は組合の投資先に関する情報を入手することは制度上できない。
ベンチャーキャピタルが業務執行組合員として運営する投資事業有限責任組合は、組合契約において組合の存続期間が定められており、存続期間が満了した組合は解散する。
ベンチャーキャピタルと投資を受ける事業会社において締結する投資契約は、投資事業有限責任組合法において、締結すべき内容が定められている。
証券取引所が定める上場基準では、上場申請日の直前事業年度の末日の翌日から上場日の前日までの間における第三者割当増資は禁止されている。
第三者割当増資において、定款に株式の譲渡制限があり、かつ、発行価額が商法上の有利発行であるとみなされる場合に限り、株主総会の特別決議による承認が必要となる。
第三者割当増資は原則として時価で発行することが必要とされているため、検査役の調査を受けた発行価格で実施しなくてはならない。
有価証券届出書において、最近事業年度の末日の2年前の日から届出書提出日までの間における第三者割当増資の取得者は、その氏名、住所等が開示される。
私募債は引受人により、投資家の数を49人以下に限定した「小人数私募債」と専門知識のある適格機関投資家を対象とする「プロ私募債」に分類できる。プロ私募債の引受人には、証券会社、保険会社、銀行、ベンチャーキャピタル等の金融機関が含まれる。
社債発行口数が50口以上の場合は、商法にいう社債管理会社を選定する必要がある。
社債は、物的会社である有限会社、株式会社であれば発行することが認められた有価証券である。
新株予約権付社債を発行する場合、私募引受人の利便性を向上させるために、新株予約権と社債とを分離することができる新株予約権付社債を発行する必要がある。
株式交換・株式移転等により、ある会社を完全子会社とした場合、当該完全子会社が発行していたストックオプションは、完全親会社に引き継ぐことができる場合がある。
ストックオプションは、商法上の規定によれば、原則として、権利行使前に譲渡できる。ただし、その譲渡につき、取締役会の承認を要する旨の決議が行われている場合には、所定の手続が必要となる。
ストックオプションは、人材の確保、従業員の士気の維持・向上に有用であるだけでなく、取引先との提携関係の強化、金融機関との協調関係の強化などにも、効果を発揮する場合がある。
ストックオプションは、とくに有利な条件で第三者に発行することで取得者に潜在的なキャピタルゲインをもたらすが、定款に特段の定めがない場合、取締役会決議で発行できるため、既存株主からの制約を受けずに様々な局面で活用することができる。