平成26年度(2014) 試験 問28 | 中小企業診断士 企業経営理論
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
Y氏は、国内外の生産者への特別発注で仕入れたカジュアル衣料品と雑貨を品揃えする小売店15店舗を、地方都市の商店街やショッピングセンター(SC)の中で、チェーンストア・オペレーションによって経営している。
近年、自店舗で取り扱う商品カテゴリーにおけるe-コマース比率が上昇していることを受け、Y氏はオンライン・ショッピングモールへの出店を行っている。
実店舗の商圏ではなかなか売り切ることのできなかった商品も遠隔地の消費者が購買してくれるケースが目立ち、今やインターネット店舗事業の販売額が実店舗の販売額を上回るようになっており、顧客の購買履歴を活用した商品提案も好評である。
Y氏の小売チェーンでは毎年夏、ヨーロッパのメーカーとの製販連携の取り組みを通して仕入れた高品質のポロシャツの販売強化を行っている。例年、3,500円から4,500円の範囲で価格設定をしていたが、需要数量に大きな差はなかった。今年、これを5,200円に設定すると需要数量は激減した。このような効果を、端数価格効果という。
Y氏の店舗の品揃えの多くは「こだわりの特注品」であるため、Y氏は過度の値引き販売は極力避けるようにしているが、過去3シーズンにおいては、商品ごとに大幅な値引き価格を表示したセールをしている。これらのセールによる消費者の内的参照価格の低下は起こりにくい。
Y氏は以前、消費者吸引を意図して世界各国から仕入れた雑貨を100円均一で販売するキャンペーンを継続的に実施していた。日本ではほとんどみられない商品ばかりだったため、買い物客の多くは価格を品質判断の手段として用い、「これらは安かろう、悪かろうだろう」という結論に至る場合が目立った。これは、価格の品質バロメーター機能である。
Y氏は顧客ひとりあたりの購買単価を上げるための施策として、キャンペーン期間中に一定数量(点数)以上の買い物を行った顧客に対して、次回以降に使用可能なバンドル販売型買い物クーポンを配布した。この種のバンドル販売の欠点は、消費者の内的参照価格が下がることである。
インターネット小売事業と実店舗による小売事業との間の明確な線引きが今後より必要となってくる。そのため、顧客対応のための組織体制づくりにおいても両者の相乗り状況を排除して、それぞれの形態固有のサービス品質の向上に取り組んでいくことが望まれる。
同じ顧客であっても、実店舗で購買する場合とインターネット店舗で購買する場合とでは買い物目的は大きく異なるので、顧客データ上の扱いとしては別々の個人として認識する方が有効である。
顧客データ分析の基盤がかなり整ってきている場合には、オムニ・チャネル化の推進が望ましい。そのプロセスでは、インターネット店舗とすべての実店舗を横断する形での顧客情報の統合や在庫データの共有によって、従来難しかったサービスの提供が視野に入ってくる。
消費者費用の観点から判断すると、インターネット店舗で購買した方が、顧客にとってより負担の少ないことが明らかである。したがって、今後はインターネット販売をさらに重視することが望ましい。