平成26年度(2014) 試験 問29 | 中小企業診断士 企業経営理論
美容院を営む一家で育ったP氏は、美容専門学校に進学して美容師になった兄・姉とは異なり、高校卒業後、ある大学で企業経営理論を学んだ。
大学卒業後、P氏は消費財メーカーでの営業やマーケティング調査部署などにおける数年間の勤務を経て、両親が経営する①フランチャイズ方式による美容院の成長を支援するために基幹スタッフとして入社した。
そこで、P氏は将来の美容院チェーン経営者にとって不可欠な②サービスやサービス・マーケティングについて、フランチャイズ方式での事業拡大の構想と関連付けながら学ぶことにした。
(設問1)
文中の下線部①に示す「フランチャイズ方式」に関する記述として、最も適切なものはどれか。
P氏の兄と姉はともに美容師であり、資格取得後、家業の美容院に勤務していたが、法人を設立して独立するにあたってこの美容院とフランチャイズ契約を結び、第一号のフランチャイザー、つまり加盟店となった。
P氏は将来的に美容院事業の国際展開も視野に入れているが、国境を越えたフランチャイズ・システムの導入はサービス業においては先例がみられないため、代替的な参入様式を検討している。
加盟店から確実に一定額のロイヤルティを徴収するためには、粗利益分配方式を導入することが適切である。
フランチャイズ方式とは、一般的に一定の資金の制約のもとでのスピーディーな多店舗化を達成するための手段のひとつである。
P氏は加盟店を募集するにあたって、事前の生産と在庫ができないというサービス固有の問題を、本部による継続的なカット・シャンプーの技能講習を通して有効に解決できる点を訴求している。
サービス・マーケティングのマネジメントでは、有形財の4Psにpeopleを加えた5Psで考えることが通常である。
サービス・マーケティングをめぐる課題のひとつはサービスの無形性に対して可視的な属性を付加していくことであるが、フランチャイズ方式の導入によってこの問題の解決を図ることは極めて難しい。
フランチャイズ方式を通じて大学のキャンパスや空港など新たなタイプの立地における加盟店の獲得を目指す場合には、チェーン全体の中で価格やサービス内容の柔軟性を獲得することが可能となる。
サービス業においては、従業員が顧客に対して全力で尽くすことはもちろん、顧客こそが価値を共につくるパートナーであるという認識をもつことが重要である。
サービスの特性のひとつに「非均質性」がある。この問題を解決するための適切な方法が、顧客に対する来店ポイント付与制度である。
従業員の組織に対する当事者意識の水準が高い企業の間では、顧客が知覚する価値が低くなる傾向が、近年の研究によって明らかにされている。
美容院の顧客から寄せられる主な不満は「カットした後、しばらくすると、髪型が崩れてしまう」というものである。このような消費による価値の消滅はサービスに固有の性格であり、有形財には当てはまらない。