平成19年度(2007) 試験 問9 | 中小企業診断士 企業経営理論
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
日本企業が海外への直接進出を始めた1960年代から1970年代には、欧米の企業と異なる海外直接投資の特徴がみられた。
現在ではそれらの特徴も薄らぎ、日本企業はグローバルな事業展開を目指すようになっている。
そして親企業の海外展開にともなって、系列の中堅・中小企業も海外進出することは最早当たり前になってきた。
さらに、ASEANや中国などへは中堅・中小企業が独自に進出することも珍しくない。
高度成長期の日本企業の基本戦略は、拡大を続ける巨大な国内市場への対応にあったため、海外進出よりも輸出による海外市場開拓を志向する傾向が強かった。
電機産業では商社のあっせんで現地パートナーの工場や施設を利用したり、現地の工場団地に入居したりして初期投資を節約しながら海外進出するといった商社参加型の進出が多くみられた。
日本企業の海外子会社は本国志向が強く、現地人の幹部登用が少なく、日常業務では日本語が多く使われるなど、現地への適応は欧米に比べて遅れた。
米国が先進国のヨーロッパにまず初めに海外直接投資したこととは対照的に、日本企業は東南アジアや中南米諸国など発展途上国への海外直接投資が数多く試みられた。
近年、進出企業の多いベトナムでは、外資優遇策、低廉な工業用地、質の高い勤勉な若い労働力などが外資を引き付けているが、概して産業インフラが十分に整っていない場合が少なくない点に注意が必要である。
これらの地域では既に多くの日本企業が進出しているので、それらの企業を通じて原材料や中間財のほとんどすべてを必要な量だけ安価に現地調達でき、また、現地国にも供給企業が多数存在するので、安定した操業を確保できることが進出の魅力になっている。
中堅・中小企業では商社をパートナーにした海外進出が多く見られるが、これは商社を通じて不足する海外進出ノウハウを補完できることや、自前で現地市場情報を直接に入手したり、海外進出のノウハウを習得できるなどのメリットがあるからである。
東アジアでは急拡大する現地市場が外資に開放されているが、注目の集まる中国では流通網が整っているのでそれを利用したマーケティング活動が可能であることが、中堅・中小企業の中国進出に拍車をかけている。
現在の中国の電機分野をみると、台湾企業等の指導を受けて、金型製作や圧縮・押出・射出成形の技術が急速に向上し、日本の技術水準を上回ってきたため、この領域への日本からの進出ができなくなった。
現地企業との分業関係が発展しにくいのは、自社の技術やノウハウの漏洩(ろうえい)防止への拘泥、取引先が日系企業であることなどのためであるが、その結果日本企業の現地との交流が乏しく、現地化が遅れる要因になっている。
この地域の電子組立・実装技術は高度であり、コンピュータなどの電子機器については世界の生産センターになりつつあるが、すり合わせ技術タイプの自動車については先進国の技術指導を受け入れる段階にある。
日系企業は現地で一貫生産体制をとることが多く、工程分業をする場合でも日系企業をパートナーに選択する傾向が強いが、台湾や韓国の企業は現地企業との取引関係を強めながら、現地化を推進している。