平成18年度(2006) 試験 問11 | 中小企業診断士 企業経営理論
経営戦略と組織の関係については、これまでは「組織構造は経営戦略に従う」という側面がしばしば主張されてきた。
これに対して最近では、既存の戦略コンテクストの中でなかば自発的に展開される自律的な戦略行動と、それらを事後的に解釈して新しい戦略の概念を練り上げていく知識創造のプロセスについても関心が寄せられている。
既存の経営戦略から演繹的に導かれた戦略行動は、その時点での組織構造と密接な関係があるので、「戦略は構造に従う」という命題が成り立つ。
既存の経営戦略のもとで社内ベンチャーのような自律的な戦略行動が展開されるためには、既存の事業から独立した研究開発部門の設置と研究者への十分な金銭的報酬を約束しておかなければならない。
現在の経営戦略は、それに従ってデザインされた組織構造や組織プロセスによって強化されるとともに、成功した自律的戦略行動を事後的に解釈し、正当化することを通じて新しい戦略が形成される。
自律的戦略行動とは、現在の経営戦略とはまったく無関係に展開される社内ベンチャーのような活動を意味する。
自律的戦略行動は既存の組織構造や組織コンテクストの影響を受けて展開されるが、ひとたびそれが形成されると、既存の組織コンテクストを破壊していく。
現在の経営戦略は、新しい発想が求められる社内ベンチャーにとっては革新性を失わせる方向に作用するため、社内ベンチャーの管理者たちには浸透しないようにしたほうがよい。
社内ベンチャーは、既存事業とは現場レベルでの組織能力の関連性が低いので、早期にスピンアウトさせ子会社として管理することが望ましい。
社内ベンチャーは、中間管理職に既存の戦略のコンセプトに疑問を抱かせ、トップマネジメントに自律的戦略行動を正当化する新しい戦略のコンセプトを定義し直すきっかけを与える可能性をもっている。
社内ベンチャーは、ボトムアップ式の戦略形成プロセスであり、現場の従業員の不満を解消する活性化策として採用される経営手法である。
社内ベンチャーを成功に導くためには、社内企業家となる技術者に高額の金銭的報酬を与えなければならない。