平成15年度(2003) 試験 問19 | 中小企業診断士 企業経営理論
組織は環境適応するために学習し、組織学習は個人の学習を通じて行われる。
すなわち、個人の知識が経験を基礎に変化するとその人の行動が変わり、その結果、組織全体の行動に変化が起こり、結果として環境の変化を導く。
個人はこの環境変化の経験を基礎に、自分の知識を修正し新しい行動を行っていく。
図はこうした組織学習サイクルを示している。
組織学習の失敗はA、B、C、Dの各段階に断絶が起こることによって組織学習サイクルが不完全なものになることで生ずるという。
以下の設問に答えよ。
(設問1)
組織学習の完全サイクルにおいてAの部分での断絶に関する記述として最も適切なものはどれか。
従業員の離職率が低い職場では、個人の知識の変化が個人行動の変化になって現れなくなる可能性は低くなる。
職務・責任・権限関係が明確に定められていないと、個人の知識の変化が個人行動の変化につながらなくなる可能性が高まる。
職務に対する報酬が十分に支払われている職場では、個人の知識の変化が個人行動の変化になって現れる可能性が高まる。
職務に忠実に行動する組織メンバーが多いと、個人の知識の変化が個人行動の変化につながらなくなる可能性が高まる。
組織メンバーが組織目標に完全に一体化していないと、個人の知識の変化が個人行動の変化につながらなくなる可能性が高まる。
階層的組織ではコミュニケーションの経路が明確に規定されているため、個人行動の変化が全体組織の行動の変化に結びつく可能性が高まる。
下位組織にそれぞれ独自の文化が形成されてくると、部門間コンフリクトが発生しやすくなるため、個人行動の変化が全体組織の行動の変化に結びつかなくなる可能性が高まる。
下位部門に十分な権限の委譲が行われていない組織では、個人行動の変化が全体組織の行動の変化に結びつかなくなる可能性が高まる。
集団の凝集性が高いと、個人行動の変化が全体組織の行動の変化に結びつかなくなる可能性が高まる。
職務・責任・権限関係が明確に定められていないと、個人行動の変化が全体組織の行動の変化に結びつかなくなる可能性が高まる。
組織があらかじめ明確に定められた情報収集メカニズムを採用していれば、個人レベルの学習は適切に行われる可能性が高くなる。
組織の行動の変化はただちに環境の変化となって現れるため、環境の変化を注意深く観察していれば、組織の行動が正しかったか否かは容易に理解できる。
高い成果をあげた組織の行動は、その前提となっている組織メンバーの知識が正しいことから生まれたものであるので、その知識は強化されるべきである。
人間は高い成果が得られた場合は自己に、低い成果が得られた場合には他者に因果を帰属させる傾向があるため、組織の行動と環境の変化との因果関係を正しく認識することが困難である。
低い成果しかあげない組織の行動は、その前提となっている組織メンバーの知識が誤っていることから生まれたものであるので、その知識は棄却されるべきである。